“水となかよしに…”特集その2 2001.8

 記録的な暑さといわれるこの夏。特に名古屋では、昼間はカンカン暑く夜もまた蒸し暑く、子どもたちでなくとも水が恋しくなります。涼む水、遊ぶ水、飲む水。思えば私たち自身も水で出来ていて、水で育った物を食べ、水で清め水で動かして生きています。地球そのものが水の星なのです。そんなことを思い出させるために、この夏地球はちょっと太陽寄りにコースを取った、という事はないでしょうけれど…。今月のテーマはこれ以外に有りません。夕立、降れ降れ!

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ひとしずくの水 
A Drop of Water

ウィック作・絵 田丸芳枝訳
あすなろ ¥2,000.
横23.5×縦30
対照:幼児から
落ちて砕ける瞬間の水、水の幕であるシャボン玉、くもの巣についた水滴と、各ページの美しい写真に目を奪われます。その写真に、シンプルでわかりやすい科学的説明が添えられていて、“水ってすごい!”という感激と共に、姿を変えていくその様子をたのしむことが出来ます。ただ見るだけでも充分に満足できる絵本ですが、この中からいくつか選んで実験をしてみるのもいいですね。ちいさい方だったら“しゃぼんだま”がお奨め。高学年の方には、雲や虹を。家にあるもので工夫してやれる実験ばかりです。
これを写真に撮れば、自分専用「ひとしずくの水」が出来あがります。




 

 

 

川はどこから
ながれてくるの

ロッカー作・絵 みのうら まりこ訳
偕成社 ¥1,165.
横237×縦22
対照:幼児から
少年たちの住む丘の上の家には、近くを川が流れ、海へと注いでいました。ふたりはおじいちゃんに、川のはじまりを見に連れて行ってもらうことにしました。ゆったりとした流れは、さかのぼっていくにつれ少しずつ細くなり、水飛沫を上げはじめます。三人は道もない川辺を踏んでさかのぼり、冷たい川で水遊びをしたり、森にテントを張って一晩をすごして、とうとう翌日、高原の小さな池につきました。川はそこからはじまっていたのです。その晩は嵐になりました。稲妻の中に浮びあがる野生馬を、三人はテントの中から見たでしょうか?古典的な美しい絵が流れを語る、抒情詩のような美しい絵本です。そしてこの絵本のもうひとりの主人公は少年たちのコリー犬。当たり前の様に三人に連れ添っているこの“繋がれていない”犬は、流れに踏みこんで水を飲み、森の動物を追いかけてからかい、自然の中で、生き生きと楽しげです。





やまなし

宮沢賢治作 遠山繁年絵 
偕成社 ¥1,400.
横24×縦28.5
対照:小学生から
川底に住む蟹たちが見上げる、川の世界。宮沢賢治の代表作のひとつです。光とあわつぶのゆらめく流れを蟹の兄弟が見上げていると、お魚がいったり来たりしているのが見えます。突然、川の天井に白いあわがたって、「青びかりのまるでぎらぎらする鉄砲玉のようなもの」が、飛び込んで来ました。そして魚の白い腹がひるがえって上の方にのぼった、それっきり、川はまた元のように静かになりました。ふるえている子蟹たちに「そいつは鳥だよ。かわせみというんだ。」と父親は教えます。
季節につれ、見上げる川面には花が流れ月光が差しこみ、山梨も流れてきます。そんな川底で蟹たちはあわをはいてくらしているのです。素もぐりした時の感覚がよみがえります。川を覗くわたしたちとは全く逆からの蟹たちの視線が新鮮です。それにしても、クラムボン、クラムボン…。