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"しっぽのお話"特集 2002.10
「しっぽのない おしり!つるつるの おしり」と、たっちゃんは、動物たちに笑われます。(「はけたよ はけたよ」神沢利子/西巻茅子 偕成社)動物から見たら、類人猿たちのお尻は何だか物足りなく間が抜けて見えるにちがいありません。動物たちのしっぽには、もちろん色々な役目があります。そして、持つことのない私たちにはよくわかりませんが、きっとその存在は誇りであり、時にやっかいの種になる事だってあるでしょう。人間にも「しっぽをつかまれる」という比喩があります。ひょっとして、わたしたちも、心にはまだしっぽを生やしているのかもしれませんね。 |
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うみのしっぽ |
内田麟太郎作 長 新太絵 童心社 ¥1,300.(本体) 横19cm ×縦26.5cm 対照:幼児から |
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ひっそりと肩を寄せ合って暮らし始めた捨てネコ夫婦が、犬に追われて街を逃れ、山にやって来ました。ところがそこでもいじわるなタヌキやクマが、ネコたちの邪魔をして魚を獲らせません。お腹を空かせたふたりはさらにもっと山奥へ。ここには冷たい水の流れる細い川があるだけです。でも、傷ついた指を川にひたすと、水が二匹をいたわってくれます。嬉しくなったネコは、むかし母さんにして貰ったように水をくすぐってあげました。そしてその時から、ネコは食べるものに困らなくなりました。ネコが川に手を入れると、朝ならカツオが、昼ならタイ、夕方ならヒラメが、ぴゅーんと海から飛んでくるようになったのです。食事時、ネコが小川をくすぐると、そのころ遠く離れた海が、くすぐったさに身をよじっていました。「お、おれの、し、しっぽを くすぐるのは やめてくれ。ヒ、ヒラメは すぐに、あげるから」そして遠い山へ向かって、魚をはねあげていましたって・・・。 |
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しりっぽおばけ |
J・ガルドン作 P・ガルドン絵 代田昇訳 ほるぷ ¥1,400.(本体) 横24.5cm ×19.5縦cm 対照:幼児から |
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大きな森の丸太小屋に、じっさまが暮らしていた。たった一部屋の小屋だが、それでもその部屋は居間にも寝床にも食堂にもなる快適な暮らしだった。ある日じっさまは3匹の犬を連れて狩りに出掛けたが、その日獲れたのは痩せうさぎ一匹。肉は自分骨は犬達が食べた後、まだ物足りない思いでいたじっさまは、小屋に忍び込んできた、奇妙な動物を見た。そいつは何とも太くて長くてそのうえおいしそうな、ふさふさとしたしっぽを持っていた。じっさまは斧をつかみ、そいつのしっぽを切り落として料理し、ぺろろりと食べてしまった。満腹で暖かくなったじっさまはぐっすりと眠り込んだが、しばらくすると何かを引っかく音で目が覚め、「しりっぽ、しりっぽ!おれの しりっぽ・・・・・」と気味わる〜い声を聞いた。その声の主は、犬に追わせても何度でも戻ってくる。「しりっぽ、しりっぽ!おれの しりっぽ とりかえしにきた!」そいつはとうとうじっさまのベッドにはいあがってきて、じっさまを・・・おお恐い!昔、アメリカの片田舎テネシーのおはなしです。 |
しっぽのはたらき |
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川田健作 |
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くもざるのしっぽは、手の様にしっかりと枝をつかんだり、くだものをもぎ取ったりして便利です。同じさるでもにほんざるでは、しっぽの向きが群れのなかでの地位を現します。犬は嬉しい時にしっぽを振り、牛のしっぽはハエを追うハタキがわり。そのほか、しっぽをパラシュートとして使うもの、つっかい棒として使うもの、舵の役目や水をかくのに使うもの。それから、音をだして相手を驚かせたり、襲われた時相手に刺す針の針山にしているものもいて、動物のしっぽの役目はほんとうに多彩です。こどもたちにとって一番不思議なのは、切れては生えてくるとかげのしっぽでしょうか?人間にはないものなだけに、なんだか気になる動物たちのしっぽです。(かがくのとも傑作集どきどき自然のシリーズに収録。) |