“名前の絵本”の号  2002.3

 唐突ですが、ピコットには"ほたる"と"源源"という猫がいて、時々お店番もしています。この二匹、呼ばれればやって来ますが、それが名前を「自分のもの」と認識しているからなのか、単なる「来い!」という合図と思っているのか、その辺りはよくわかりません。猫の方ではもちろん、飼い主の名前など覚えるつもりはなさそうです。その点、人間の赤ちゃんはわりと早い時期から、名前を「自分のもの」と大切に思っているらしく、ふざけて間違った名前を呼ぶと怒ったりしますね。考えてみれば、動物たちは一生を名前無しで過ごす者の方が多いけれど、人間は反対に名前なしというのでは、不自由で仕方ありません。
 出会いの季節、小さい方のファイルにも、新しいお友達の名前が加わることでしょう。

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えっちゃんのなまえ

赤座 憲久 作・藤田三歩絵 
佼成出版社  \850.(本体)
横21.5×縦245p
対象:幼児

 
今年から幼稚園にいくことになったえっちゃん。お母さんが、かばんや帽子やスモックに名前をかいてくれました。「へええ?なかやまえつこ?えっちゃん・・・じゃないの?」「 幼稚園で、なかやまえつこさーん、と呼ばれたら、お返事するのよ。」とお母さん。そしてえっちゃんは、お父さんやお母さんが「なかやま あきお・なかやま みさこ」ということや、なかよしの のんちゃんには、「やまぐち のりこ」けんちゃんには「ふじかわ けにち」と、みんな呼び名ではない正式なお名前を持っていることを知ります。えっちゃんの名前は、なかやま えつこ。幼稚園に行く日がたのしみです。




 

あっちゃんあがつく      たべものあいうえお

みね よう 原案 さいとう しのぶ作・絵 
リーブル  \1,800.(本体)
横17×縦15p
対象:幼児から

 相手の名前をはやすはやし歌は昔からあるので、子ども同志ふざけて歌いあった記憶をお持ちのかたもあるでしょう。松谷みよ子さんのわらべうたの絵本にも「むっちゃんむがつく むーざえもんー」というフレーズが出てきます。ご紹介するこの絵本「あっちゃん あがつく」は、その現代版・食べ物バージョンとでも呼べるものです。あいうえお順に並んだ各ページで、「アイスクリーム」や「おにぎり」や「エビフライ」が、いかにも楽しそうに、食べられるのを待っています。まず自分のページを捜した後は、仲良しのお友達のページを開いて、「わー、やっちゃんやがつく やいいもふかふか だって!」などと盛り上がること!「゛」 や「゚」の付く音も全部収録されていて、外国のお友達も珍しい名前の子も、自分のページがない子はありません。





めっきらもっきら           どおんどん

長谷川摂子作 ふりや なな絵 
福音館
  \800.(本体)
横27×縦19.5p
対象:幼児から
 今日に限って遊び相手はだーれもいない。仲間をさがしてお宮までやって来たかんたは、やけくそででたらめ歌を歌った。「ちんぷく まんぷく あっぺらこの きんぴらこ じょんがら ぴこたこ めっきらもっきら どおんどん」すると強い風が吹いて、三人の妖怪のいる世界へ吸いこまれてしまった。三人が泣いて頼むので、かんたは一緒に遊んだ。ももんがーごっこに、お宝こうかんに、縄跳び。お腹が空くと、お餅のなる木を見つけて食べた。満足した妖怪たちが眠ってしまうと、かんたは何だか心細くなり、思わず「おかあさ〜ん」と呼んでしまった。三人が「それをいったら おしまい!」と止めたけど間に合わず、かんたの体はクルクルクルと元のお宮へ・・・。三人のなまえは、しっかかもっかか・おたからまんちん・もんもんびゃっこ。またいつか妖怪たちとあそびたいかんただけど、あのでたらめ歌が思い出せないのですって。

へんてこもりのなまえもん

たかどの ほうこ作・絵 
偕成社
  \900.(本体)
横15.5×縦21p
対象:幼児から
 そらいろ幼稚園の裏にある「へんてこもり」は、不思議な事が起こる森です。今日もなかよし4人組がでかけていくと、ちょうどまるぼ(というのは、森の不思議な住人です・・・)が呼んでいました。なんでも、なまえもんというヘンテコなやつに、森の仲間のぼさこううるりんぞ(このふたりの事は前作で読んでね。)が食べられてしまって、森の外の仲間にしか助けられないと言うのです。なまえもんは、ちょっとガマガエルみたいで頭に黄色い本を載せ、生き物を丸呑みしてはその名前を集めているのでした。子どもたちは、仲間を助けて無事へんてこもりから帰ってこられるのでしょうか?「へんてこもりに いこうよ」「へんてこもりの コドロボー」に続く3作目。

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