“お人形のきもちは・・・”の号 その1 2003.9

おにんぎょうの気持ちは・・・その2 はこちら

 お人形をめぐる絵本はたくさんあって、どのお話の中でも彼らは人格を持ち、ひたむきにその持ち主に心を寄せます。それは現実生活では達成することの難しい、大人と子ども・人と人の理想的な関係なのかもしれませんね。今回は、持ち主との再会をはたす、クマのお人形たちのお話です。

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ボリボン


ベロニカ作・絵 みや こうせい訳
福音館 ¥1,100.(本体)
横22cm ×縦15.5cm

対象:3歳から

 ガビはいたずらっ子で、おもちゃは何でもこわしてしまいます。お母さんにもらったくまのぬいぐるみボリボンも、お医者さんごっこで、さっそくお腹をじょきじょき切られてしまいました。クッションに寝かされていたボリボンは、ガビが出かけている間に、姿を消します。きっと逃げ出したにちがいありません。探しに出かけたガビは、何人もの子どもたちに尋ねました。「ボリボンみなかった?おなかの やぶれた はいいろの くまだけど」
ボリボン自身は苦痛も訴えず不満も言いませんが、捜しても捜しても見付けられなくて、ガビがワッと泣き出すシーンでは、聞き手の子どもたちも涙が込み上げるようです。それは、大切なものを傷付けたり失ったりした経験のせいでしょうか。それとも、たとえお腹を切られてもこんなに捜してもらえるぬいぐるみへの共感でしょうか?
「ラチとライオン」で子どもの心を捉えているベロニカ。相変わらずそっけないほどにシンプルなイラストが、見る側の空想を刺激してくれます。ほっとするラストシーンも、さすが。





どうしてかなしいの?

グレイニエツ作・絵 ほその あやこ訳
ポプラ社 ¥1,300.(本体)
横22cm ×24縦cm 
対象:4歳から

 公園のベンチにぽつんとテディベアが。男の子は連れ帰り、絵本を見せたり、ぬいぐるみ仲間を紹介したりと、思いつく限りのことをして慰めますが、テディベアは悲しげな表情をするばかりです。持ち主を恋しがっている彼の気持ちをを認めない訳にはいかず、翌朝、男の子は元のベンチへとお人形を送っていきました。
 この本は反対側から開くと、テディベアと女の子の思いがけない別れが描かれています。そして本の中央でふたりは再会し、それは男の子と女の子の出会いともなります。少々ほろ苦いお話なのに子どもたちに人気のこの絵本。小さい人たちも、日々の暮しの中で悲しみを経験し、そこから思いやる心も育っているのだと感じさせてくれます。



くまのコールテンくん

フリーマン作 ・絵 
まつおか きょうこ訳
偕成社 ¥1,200.(本体)
横24cm×縦22.5cm
対象:3歳から

 デパートのおもちゃ売り場でお人形たちはみんな、だれかが家に連れて帰ってくれるのを待っていました。緑色のズボンの小さなクマコールテンくんは、ある日女の子の目に留まりますが、お母さんに「新品じゃないみたい、ボタンが取れてるわ。」と言われてしまいます。夜、コールテンくんはボタン探しに出かけました。家具売り場まで行くのがせいいっぱいの小さな冒険の一夜。ボタンを見つけることが出来なかったコールテンくんを、翌朝、女の子が迎えに来てくれます。女の子の貯金箱にはちょうどクマが買えるだけのお金があったのでした。女の子に抱かれたコールテンくんの、満足げな顔!
 1975年に日本に紹介された超ロングセラー。今回久し振りに手に取って見て、コールテンくんのけなげさ可愛さに改めて魅了されました。





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