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“だいすき!を伝える絵本 ”特集 その1 2004.10
絵本と言えば、そのテーマの半分以上は「好き!という気持ちを伝えること」と言っても言い過ぎではないと思います。その相手は異性に限らず、家族や動物たち、日頃一緒に過ごすお人形・おもちゃ、お友だち、自然界と、対照は限りなく広いのですが。このテーマで特集を組んだら一年書いても書き尽くせませんけれど、ピコット流セレクトで、これからも定期的に取り上げて行きたいと思います。あ、そう言えば先月は、絵本への"好き!"でしたっけ・・・。 |
ぼくにげちゃうよ |
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遠くへ行ってみたくなったこうさぎのぼうやは、お母さんに言いました。“ぼく にげちゃうよ” するとお母さんが言うのには、“おまえが にげたら,かあさんは おいかけますよ”。 “かあさんが おいかけてきたら、ぼくは、かわの おさかなに なって、およいでいっちゃうよ”と坊やが言えば、“りょうしになって、おまえを つりあげますよ”と、かあさんうさぎ。高い岩や庭のクロッカスや小鳥になって、と、ぼうやは母さんのことばから逃れようとしますが、それなら登山家や庭師や小鳥のとまる樹になろう、と、母さんは一歩も譲りません。安全な巣穴で冒険にあこがれるうさぎぼうやと、幼いぼうやを手放すまいとするうさぎ母さんのやりとりのそこここに、信頼と甘えと愛情が見え隠れしています。母子の愛は、すべての「好き!」の源なのかもしれませんね。 |
だいすきよ、
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リリーは、ぬいぐるみのブルーカンガルーが大のお気に入りです。ブルーカンガルーも、そのことをよく知っていましたし、そして勿論、リリーのことが大好きでした。ある日お客さまが、リリーにクマのぬいぐるみを持ってきてくれました。リリーはその夜、「だいすきよ、ちゃいろグマさん・・・」と言って、(ブルーカンガルーにもそう言ってはくれたけど。)いつも二人で眠るベッドに、クマも一緒に寝かせました。ブルーカンガルーはよく眠れませんでした。その次にリリーは、別のお客さまから、黄色いふわふわウサギを、又別の日には別の人から、2匹の子犬をもらいました。そして、リリーの誕生日には、もっともっとたくさんのぬいぐるみたちがやって来ました。たくさんのぬいぐるみたちと一緒にベッドに寝かされたブルーカンガルーは、眠れないでいるうちに、とうとうベッドから転げ落ちます。大好きなリリーの心からはみ出してしまったと悲しむ、ブルーカンガルー。その気持ちに、リリーは気付いてくれるでしょうか? |
はくちょう
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内田麟太郎文 |
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春、白鳥たちがみな北に向かって飛び立ったあとの小さな池で、傷付いた一羽が羽根を休めていました。暖かな湧き水で白鳥が傷を癒すのを、池は黙って見守っていました。池は、白鳥の回復していくを見守りながらも、別れの時が来るのを恐れます。いつの間にか、白鳥に心を惹かれていたのです。ある朝とうとう、その白鳥は旅立ちました。池は、何も言うことができません。そして、一番大事なことをいえない自分に腹を立てていました。見上げると、もう白鳥はもう空のかなたに消えていこうとしています。励ましあう相手もなくたったひとりで北に向かう白鳥を思って、池は思わず叫びました。「はくちょうさーん」 そしてその時、池は、白鳥の形となって飛び立っていました・・・。友だちよりももっと切なく甘い「大好き!」。 |