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“終りよければ・・・” の号 2004.3
正直さや努力で人生を成功させるお話も、自分を励ますのにいいのかもしれません。偉人伝や昔話には、そんなお話がたくさんあります。でもそういうお話が今日の気分には合わないぞ・・・と思う日は、運の悪い出来事や、とんでもない失態にめげない主人公が、ハッピーエンドを迎えるお話がお奨めです。人生なんて "こけつ まろびつ" だもの。いろいろあっても何とかなるさ、というのは、生きていく上で大事な哲学。一生懸命やったのに報われない結果に終わった日や、失敗が重なってめげそうになった日には、こんな本を読んで心の仕切り直しをどうぞ!
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パンのかけらと
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貧しい木こりがお弁当に持って来たパンのかけらを、ちいさな悪魔が盗みます。鼻高々で帰った悪魔ですが、大きい悪魔たちに、「びんぼうな きこりの だいじな べんとうじゃないか」と叱られ、お詫びに行かされることに。木こりは、小さい悪魔に是非にといわれて、森の奥の沼を麦畑にすることを思いつき、地主の許可を得て来ました。そして、悪魔の働きで、見る間に沼は、銀色の穂をつけた見事な麦畑になりました。ところが何ということでしょう。欲張りな地主は、「むぎばたけにしてよいと いったが おまえに やるとは いわなかったぞ。」と、麦を刈り取ってしまい、木こりは嘆き悲しむばかりです。すると今度は、小さい悪魔が、「せめて たったひとたばでいいから 」と、木こりにやる約束を取り付けてきました。けれども、1束は1束でも、小さい悪魔が束ねたのはとてつもなく大きな束!パンのかけらがきっかけで、貧しいきこりが、麦も畑も、そしてたくさんの牛まで手に入れるお話です。悪い地主をやっつけるのが悪魔だというのも、木こりは大した働きをしなかった点も、わたしはとても気に入っています。 |
まのいいりょうし | |
小沢正作 飯野和好絵 |
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猟師のどんべえさんは鉄砲が下手。何といっても、まだ一度も獲物にあたったことがない、という位ですから。そのどんべえさんが山へ出かけてみると、木の枝に鳥がとまっていました。「すごい すごい。きたばかりで すぐに えものが みつかるとは、なんて まが いいんだろ」と、どんべえさんが撃ったたまは、見当はずれの方向に飛んで、いのししのお尻に。いのししは怒って走って来て、どんべえさんの登った木の幹にぶつかって、どたん!いのししを縛ろうと藤づるを引っ張れば、栗の実がばらばらばらっ。いのししを担いだどんべえさんは川に落ち、あわてて木の根っこにつかまったつもりが、それは木の根っこではなくうさぎの足・・・という具合に、やる事なす事がうまくいきます。「ほんとに まったく、なんて まが いいんだろ」と喜んでいるどんべえさん、この先も運は続き、とうとう最後には長者どんの婿さまに納まってしまいます。いやはや本当に羨ましい!どんべえさんの半分でもいいから、こういう間の良い事に出会ってみたいものです。ところで気になるのが、どんべえさんの足元をうろちょろしている犬。彼(?)もどんべえさんに負けない位どんくさい猟犬のように見えます。 |
ひよこのかずは
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I&P・ドーレア作 瀬田貞二訳 福音館 ¥1260.(税込) 横21cm ×縦28cm 対象:4歳から |
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めんどりとおんどりと、犬と猫を飼っているおばさんがいました。朝が来るとおんどりがトキを告げ、めんどりが卵を産み、そうして36個も卵が溜まったので、おばさんは町へ売りに行く事にしました。卵をつめた篭をさげ、町へ向かう道すがら、おばさんは退屈しのぎに考え事を始めます。卵はいったいいくらで売れるだろう。「まあ かんがえてごらん」と、おばさんは、声に出して数えだしました。卵を売ったお金で、まずめんどりを2羽買う。するとめんどりは3羽で産む卵は3倍に。また売って、それでめんどりを6羽にして、産んだ卵の半分はひよこに孵し・・・、と膨らんだ空想の中で、とうとう伯母さんは大農場の奥様。すっかにその気になって気取って歩いて見せた途端に卵の篭を落とし、篭の中の卵もおばさんの思い描いた農場も、みんなおじゃんに。「あらまあ、どうしよう!」と叫んだおばさんですが、家に引き返しながら思い直します。「とことん わるいってわけでもないさね。」 暮らしていける小さい家と犬と猫とおんどりとめんどりが、自分にはまだあるからと。 |