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“ガブリエル・バンサンの絵本たち”特集 2005.1
「絵本作家 ガブリエル・バンサン」が刊行されたのを機会に、改めてその43点を振り返ってみました。バンサンの絵本はほぼ、ピコットが開店してからの20年間に、BL出版から発行されました。絵本屋稼業と格闘しながら、彼女の新しい絵本に出会い、励まされたり、類まれなデッサン力と感性の生んだ作品に、こころの痛くなるような共感を覚えたりして来ました。2000年9月没。とても選びきれない作品群の中から、迷いに迷って選んだ5冊をご紹介します。店頭では全点フェアを開催中。(〜2月末) |
アンジュール −ある犬の物語 |
その犬は捨てられます。走る車の中から・・・。そして、捨てられたとも知らず必死で飼い主を追います。バンサンのデッサン力ゆえ、描かれたその姿が哀れ過ぎて、何度もページを閉じながら読みすすんだ方も多いでしょう。最後に子どもと出会って心を通わす場面があるのもまた、バンサンらしいと言えるかも知れません。実はあまり開きたくない、けれども大好きな1冊です。文字なし絵本。バンサンのデビュー作。 |
バンサン作 BL \1,365.(税込) 横26cm×19cm |
くまのアーネストおじさん |
ある日セレスティーヌは、鍵の掛かったチェストの引き出しをこっそり開けて、アーネストとシロネズミの女の子の写真を見つけます。この子はだれ?どうして私が写っている写真はないの?ネズミの女の子セレスティーヌと、大きなクマのおじさんアーネストのお話の1冊。 シリーズの最後には「セレスティーヌのおいたち」が、他にデッサン絵本「セレスティーヌ アーネストとの出会い 」も出されていて、赤ちゃん時代のセレスティーヌや、二人の関係を知る事ができますが、19冊目までを読みながら二人の情報をパッチワークのように繋いでいくのも楽しみ。シリーズのどの1冊を開いても、セレスティーヌの心の動きが、まるで自分ことように近しく感じられます。余談ですが、人の体型に動物の頭という図が苦手なわたしも、セレスティーヌのスカートから覗いている「ネズミのしっぽと女の子の足」はとても可愛く思います。 |
バンサン作・絵 もり ひさし訳 BL \1,365.(税込) 横24cm×21cm |
パプーリとフェデリコ 1 |
森で暮らす初老のパプーリは、男の子の世話をすることになって、気ままな生活をあきらめざるを得ない。その少年フェデリコは、森に来るまで荒れていた。物のない森での、薪を集めキノコを採る生活だが、二人で暮らすうち彼は変わっていく。パプーリを気遣ったり、連れ戻されることを恐れるようにもなってきた。「わかる?おっちゃんといると、いろんなことが すきになるんだ。」そんなフェデリコにパプーリは、生きるのに本当に必要な事は何なのかを伝えようとする。 |
バンサン作・絵 今江祥智・中井珠子訳 BL \1,428.(税込) 横28cm×21cm |
老夫婦 | ジャック・ブレルの有名なシャンソン(だと言う事です・・・。わたしは知りませんでした。)である「老夫婦」をバンサンが絵にしました。歌詞はジャンソンの常でどこまでも切ないのですが、この絵を見ていると、老夫婦の人生に対する満足感のようなものも見て取れるのは不思議です。この作品の後になる「ある夏」では、親しい人の死を取り上げています。私たちが人生の後半戦について考える時のために、バンサンがこの2冊を残してくれたのかもしれません。 |
ブレル詩 バンサン絵 今江祥智訳 BL \2,447.(税込) 横36cm×26cm |
画集 砂漠 | サハラ砂漠とトゥアレグ族の生活を描いた画集。砂漠の民が滅亡してしまう前に・・・と、ふた夏をそこで過ごしてスケッチしたというバンサンですが、「これらのデッサンには正確なところは何ひとつないとさえ言える」と後書きに書いています。それは単なるスケッチではなく、彼の地に実際にあったものと彼女の中にあったものが、溶け合い混じり合ったものだと。見知らぬ土地での人々の暮しは、見る者自身の人生とも重なります。 |
バンサン画 BL \8,155.(税込) 横36cm ×26cm |