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“疲れた心の処方箋”特集 2005.2
今はもう、絵本は子どものものか大人のものか・・・などという議論は聞かれなくなりましたが、それでも、大人の方にはまだまだ絵本は届きにくい。蓄積した小さな苦労やら、思いがけない悲しみとの出会いやら、おとなにこそ絵本が必要という時もあるのですが・・・。心を一休みさせたい時にどうぞ! 街はチョコレートであふれ返って、バレンタインディ。にしてはちょっと渋いセレクションでした。 |
いつも だれかが |
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年を取り病床にあるおじいちゃんが、孫息子に語ります。「わしは なにをしても うまくいったんだぞ」 いたずらだった少年の頃のこと、つらい戦争やその後の混乱を乗り越えたこと、愛する人と出会って子どもが生まれ、一生懸命はたらいて家を建て車も買い、「そして おまえのおじいちゃんに なったんだよ」。 わたしは運がよかった、幸せだった、と語る老人は、彼を守りつづけた守護天使の存在を知っていたのでしょうか。老人が目を閉じた後、天使は、無邪気に通りを駆けて行く孫の後についたのでした。 1人の老人の最期がテーマでありながら、「人生いろいろあるけれど、でも大丈夫だよ!」と誰かに言ってもらっているような、そんな安心感に包まれる絵本です。 |
悲しい本
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愛する息子を失い、悲しみの只中に居る男の人。悲しみを隠して笑ってみても、語ったり書いたりすることで何とか悲しみをやわらげたいと思っても、体の中に痛いほど詰まった悲しみは去らない。時には取り乱し、時には忘れようとし、結局また悲しみに沈む。「私の悲しみだから。ほかの誰のものでもないのだから。」 子どもの本では必ず到達する約束のハッピーエンドは、この本ではやって来ません。でも、見えない振りをしている自分の中の悲しみを、「あったっていいじゃないか」と言ってもらえたようで、安らげます。 |
1000の風
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チェロの教室に新しく入った女の子と、「ぼく」は、チェロを抱えた大勢の人たちに出会う。その数に驚き後をついて行くと、そこは、「だいしんさい ふっこうしえんコンサート」の練習会場だった。知り合ったおじさんに「みんなのおとをきいて、きもちがひとつになるように かんじながらひくんだ」と励まされ、二人はコンサートに参加することになる。「ぼくのおとが、なにかのおうえんになるんだろうか」と考えたり、失った愛犬との日々を思い返しつつの、練習の日々。コンサートには、1000人以上のチェリストが集まった。1000のチェロがいっせいに鳴り響く。寄せては返す 波のような弓。風になって吹きぬけるチェロの音。 自身も13歳からチェロを始め、「チェロを弾く人の姿は、私には 人が自分の影を抱きしめているようにみえてならない」と書く伊勢さんの、体験から生まれた作品。再生を奏でるチェロが聞こえてきます。 |