“海の中”の号   2005.8

 夏といえば海。生命の生まれた母なる海ですが、旅立ってから長いわたしたち人間には、地上に比べて海は見知らぬ世界です。恐さ、驚き、興奮!そして、心地よさ。エラ呼吸の機能なしで海の中を自由に楽しめるのは、もちろん絵本だからこそ。涼しいところに寝転んで、あなたも海へどうぞ!

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たこなんかじゃないよ

秋野和子作 秋野亥左牟
福音館 ¥840.(税込)
横27cm×縦19.5cm
対象:4歳から

 サンゴの穴でのお昼寝から目覚めたたこは、海中散歩に出掛けます。美しい海の底も、生き物たちにとっては喰うか喰われるかの世界。おいしそうなにじいろの魚が泳いで来れば、「わたしは さんご わたしは さんご たこなんかじゃないよ」と、体の色を変えてオレンジ色のサンゴに隠れ、近寄ってきた魚に巻きつきます。うつぼに出くわせば、大慌てで海草の林へ。「わたしは かいそう わたしは かいそう たこなんかじゃないよ」とゆれて天敵から身を守ろうとします。
 沖縄の海でたこを獲っていた"絵を描く漁師"秋野さんご夫妻だからこそ描ける、海の底の出来事。たこは好物(ごめん!)のわたしですが、この本を読むまで、色や姿を装う事や、その素早い動きについて何も知りませんでした。足を一本かじられたけど、自分の穴に戻ることができたたこは、ようやく、「わたしは たこ・・・・・」とお昼寝の続き。

 



海のそこへ  
―フリズル先生の
  マジック・スクールバスー

コール作 ディーギン
岩波 ¥1,470.(税込)
横23cm×縦19.5cm
対象:5歳から

 フリズル先生は学校一変わった先生。(と、クラスの子どもが言っています。)とても風変わりな洋服を着て、ドキドキワクワクの授業をします。きょうは海へ。海辺ではありませんよ、海の中へです。フリズル先生がおんぼろスクールバスを海に乗り入れると、なんとスクールバスは潜水艦に。海底の生物を調べた後は、浮かび上がり、バスはボートになったりサーフボードになったりして子どもたちを乗せ、海の哺乳類のこと海流のことなど、フリズル先生の授業が続きます。羨ましくなるような授業風景ですね。
お話の展開は奇想天外ですが、実はこの本は、関連したさまざまな情報がぎっしりと書き込まれた知識の本。「水のたび」「からだたんけん」など全8冊の人気のシリーズです。





びっくり水族館  
 ―絵巻えほんー

長新太作・絵
こぐま ¥2,100.(税込)
横26cm×縦26cm
対象:3歳から

 大きなお魚の形をした水族館。そのぱっくり開いた口から子どもたちが楽しげに入館すると、そこにはとってもオカシナ姿と名前をもつ海の生き物たちが・・・。足の生えたアルクサメ。しっぽにいろんなお花を咲かせたハナサキウオ。作者そっくり(!)のオジサンジュゴンもいます。本物の水族館に行き、あまりに変わった生き物がたくさんいるのに驚いたという長新太さんが、読者のために描いたこの絵本は、畳まれたページを広げると、全長2.8メートルの大絵巻。長さんは逝ってしまわれましたが、書棚では長さんの絵本が子どもたちを笑わせています。



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