"今だけちょっと へそまがりさん!"の号  2006.6

 人の気持ちを知るのは難しい。でも、一番わかり難く扱いにくいのは、実は自分の心ではないでしょうか。ましてや小さい人たちは、ただ今、自分自身を試運転中。ギクシャクしたってあたりまえですよね。少々へそまがりさんにヘンシンの時も、何しろ初心者だもんねと笑って見守ってあげたいものです。

 

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 こわくない
   こわくない

内田麟太郎大島妙子 
童心社
¥840(税込)
横18.5cm×縦21cm
対象:1歳から

 このごろ反対の事ばかり言いたい、まーくん。「ねんねしよ」と言われれば、「ねんねしない」「じゃ おきてましょ」と言われると「ねんねする」。その夜まーくんの夢に、お化けが出てきました。「こわいか こわいか」「こわくない こわくない」「これな らどうだ こわいか こわいか」「こわくない こわくない」 次つぎ姿を現すお化けたちに、まーくんは必死の表情で「こわくない」を言い続け、とうとう恐ろしい姿のお化けのほうが、「こわがらないよ え〜ん え〜ん」。そこでやっと、まーくんも、泣き出した。「こわいよ こわいよ え〜ん え〜ん」 それなのに、「こわい ゆめを みたのね」と、お母さんに優しく抱きしめられると、泣きながら言いました。「まーくんは こわくなかったよ」 彼、大物です!

 



 

ブルーカンガルーが
      やったのよ!

  

クラーク・絵 
まつかわ ゆみこ
評論社 ¥1,365..(税込)
横18.5cm×縦21cm
対象:4歳から

 

 リリーは、ぬいぐるみのブルーカンガルーが大のお気に入り。でも時々、自分のしたいたずらを、「ブルーカンガルーがやったのよ」と言います。流しの水をあふれさせた時も、猫に無理やり赤ちゃん服を着せた時も、弟を泣かせた時も。そう言われるたび、ブルーカンガルーは、黙ってリリーを見つめます。とうとうママが、「ブルーカンガルーがそんなに わるいこなら、・・・」と、取り上げて高い本棚に上げてしまいました。その夜、寂しくて泣きながら眠るリリーを見て、ブルーカンガルーは、リリーの代わりにママへの手紙を書きます。「ごめんなさい」と。一旦口に出したことを引っ込められなくて、苦しい思いをした経験、誰にもありますね。決してゆかいな展開のお話ではないのに、子どもたちに人気があるのが分かる気がします・・・。「やきもち」や「まいご」など、子どもの心理をテーマにしたシリーズの1冊。




 

しっぽのきらいな
        ネコ

  

南部 和也
いまき みち
福音館 ¥1,155..(税込)
横24.5cm×縦22cm
対象:4歳から

 

 真っ黒なネコは、自分が黒いことがとても気に入っていました。その自慢の黒いしっぽの先が、ある時黄色くなり始め、とうとうしっぽ全部が黄色に・・・。「おまえなんか きらいだ、きいろのしっぽなんて おかしいよ」すると、「わたしも くろいネコなんて きらいだわ」。それから、きいろいしっぽは、真っ黒なネコのすることには何でも逆らい始めました。友だちには挨拶せず下を向き、ねずみを捕ろうとすればバタバタ動きます。しっぽが動いたせいで、ガールフレンドの白いネコにオシッコがかかってしまい、真っ黒なネコは、本当に怒りました。そして仲間のネコたちに噛み付いてもらいました。「ギャオーン」 噛まれたしっぽは痛くて痛くて、しっぽとネコは三日三晩泣いて過ごしました。四日目、真っ黒なネコも黄色いしっぽもお腹がすき、二人は協力してネズミを捕りました。その時から、二人はお互いをそんなに悪くないと思えるようになったのでしたって。許せない自分を何とか受け入れていく、といった心理的分析はしないでおきましょう。ネコに表情筋があれば絶対こうだと思えるいまきさんの絵が、このありえないお話を現実にしてしまっています。




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