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“どろぼうたちの絵本”特集 2007.8
「優しい子に育つために、何か絵本を」と尋ねられた時、うーん、それはどうかな・・・と、ちょっと意地悪なお返事をしてしまうわたし。主人公の行動に感激したからって、たちまち自分も主人公のようになるというのは難しいと思います。その代わりといってはなんですが、泥棒の絵本を楽しんだからって、将来泥棒になっちゃう訳じゃありませんから、ご安心を。やってはいけない泥棒の気持ちを体験することで、善悪の判断を身に付ける?などという教育的考えも無し。まぬけなどろぼう、ずるい泥棒、優しいどろぼう。どのお話も、とってもおもしろいからお勧め。・・・いったいどういう基準で絵本を選んでいるのだと叱られそうな気もしますが、体験し得ないことやしたらマズイことも、お話の中でなら楽しんでしまえる、それが読書の楽しみの一つだと思っているピコットです。 |
ふるやのもり
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日本の昔話 瀬田貞二再話 田島征三絵 福音館 ¥840. (税込) 横27cm×縦19.5cm 対象:4歳から |
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むかし、ある村のはずれに、じいさんとばあさんが住んでいました。ある時、二人が育てている子馬を盗もうと、泥棒が忍び込みました。山のおおかみも、子馬を取って喰おうと、ワラの山に潜んでいました。そうとは知らないじいさんとばあさん、こんな晩に泥棒が来たら怖い、いやおおかみのほうがもっと怖いと話していましたが、結局のところ、「どろぼうよりも、おおかみよりも、このよで いちばん こわいのは、ふるやのもりじゃなあ」 ということになります。そこへちょうど雨が降ってきて雨漏りし始め、二人が、「そら、ふるやのもりが でた!」と叫んだところで、泥棒の首にしずくがぽとん!あわてた泥棒が「ふるやのもりじゃ!」と叫んで飛び降りたのがおおかみの上だったから、おおかみもまた、ふるやのもりに襲われたと思い込んで、大慌て・・・。聞き手には怖いどころかとても愉快なこのお話、後は読んでのお楽しみ!
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すてきな三にんぐみ
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アンゲラー文・絵 |
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黒マントのこわ〜いどろぼう三にんぐみ。恐ろしい武器でお金持ちを襲い、金銀宝石を巻き上げていた。ところがある夜襲った馬車には、孤児のティファニーちゃんだけ。三にんぐみは、獲物のかわりにティファニーちゃんを、大事に隠れ家へ連れてった。宝の山を見たティファニーちゃんはびっくり。「まぁぁ、これ、どうするの?」 どうするつもりもなかった三にんぐみは相談し、「さびしく かなしく、くらい きもちで くらしている、すてごや みなしごを どっさりと」 国中から集め、お城を買った。みんなで一緒に暮らすんだ。こうして、お城の子どもたちはどんどん増え、大人になるとみんなお城の周りに住んだので、村が出来た。この村の人たちは、赤い帽子に赤マント。そして、三にんぐみを忘れないよう、三つの高い塔を建てましたって・・・。 |
チンパンジーと
さかなどろぼう |
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タンザニアのおはなし |
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チンパンジーのソクベは漁師です。たくさん獲れた魚を売ろうと、村の仲間と一緒にトラックで出かけました。みんなはそれぞれ、市場で売るものを何かしら積みましたが、イヌだけが何も持たずに乗り込んで、魚のカゴのところに陣取りました。そして、隙あるごとに魚に手を出そうとして、仲間に叱られますが、ライオンの怪我の騒ぎにまぎれて、とうとう魚をカゴごと盗んで逃げて行きます。たらふく魚を食べたイヌは、翌日、村のみんなにつかまって裁判に掛けられます。でもアフリカでは、こんな身勝手も、償えば村八分にはならない様子。「ソクベとイヌは、もともとは、ともだちでしたから、」という訳で、村の祭りでは、ふたりは一緒に踊りました、って。厳しい気候の国の昔話なら考えられない、なんとも寛容な結末です。極彩色絵の中から、タム・タム・タム・・・という太鼓の音が聞こえてきそう。みんなで楽しむことの上手な、アフリカの暮らしが感じられる絵本です。 |