“秘密がいっぱい!土の中”の号 2009.9

 地面と見ればせっせと穴を掘るのが子ども。保育園や幼稚園の園庭では、よく穴ぼこに遭遇します。子どもたちは地面の下で起こっているらしい<いろんな奇跡>に惹かれているのでしょうか?それとも、ただ掘るのが楽しいから?今月は土の中特集です。

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あな

谷川俊太郎 和田誠 
福音館
¥820.(税込).
初版1976.11
横27cm×縦19.5cm
対象:3歳から

 日曜日、ひろしは庭に穴を掘り始めました。家族や友だちがやってきて、いろいろと声を掛けます。ただ掘っているだけで特に目的も無い彼は、あたりさわりのない返事を返しつつ。汗をかき手に豆を作って、掘って掘って、ようやく自分の体が入るまで掘ると、その中に暫く座って穴の感じを味わいました。「これは ぼくのあなだ。」 そうして今度は、穴を埋めました。ゆっくり、丁寧に。これはぼくの穴だから。
 だから何?なんて聞かないでくださいね。地面があって穴がある。それだけで子どもには十分なんです。ひんやりした土の匂いの絵本です。



さつまのおいも

中川ひろたか 村上康成
童心社 
¥1,260.(税込)
初版1995.6
横22cm×縦21cm
対象3歳から

 たくさん食べていっぱい眠って、体を鍛えて、畑のさつまいもたちは"その日"に備えています。秋晴れの"その日"には 、こどもたちが大勢やってきて、おいものツルを引っ張るのです。地面の下ではさつまのおいもたちも「うんしょ とこしょ」、負けじと応戦しますが、子どもたちに引っこ抜かれて、「まけで ごわす」と降参。ところが、おいしい焼き芋大会のあとでは・・・。(^o^)
 子どもたちの植物への関心は本当のところ、昆虫に対するほど熱心ではありません。ポイントは、「食べられるかどうか!」ですね。見えない地面の下でぐんぐん育って、おいしくなって現れるお芋こそは、驚きと美味しさがセットになった地中のヒーローです。


 



つちらんど

近藤薫美子
アリス館
¥1,575.(税込).
初版1997.7
横30.5cm×縦21.5cm
対象:4歳から

 一本のタンポポの根っこが長く長く地中に伸びていて、その根に沿ってたくさんの虫たちが暮しています。ミミズ、ダンゴムシ、セミの幼虫、いもむし、おけら、カタツムリ、ナメクジ、各種甲虫の幼虫たち・・・。ダニもいるらしいです。いったいどのくらいの種類の生き物が描かれているのでしょうか?普通の人には「名も無い虫」としか言えない、でもちゃんと「名のある」たくさんの小さい生き物たちの生きている様子が、台詞入りで(本当です!)描かれています。近藤さん作の一連のちいさい生き物の絵本のなかで、唯一の土の中編です。
 眺めるだけなら楽しいこの絵本ですが、その楽しさを文章にするのは至難のわざと書いていて実感しました。自分があまりにつちらんどの生き物を知らなさ過ぎるのです。掘り出してみなければ目にすることの出来ない地中の生き物たちを、穴掘りの好きな子どもたちのほうがよく知っているのかもしれません。

 



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