“おいくらですか?”の号 2010.3
  いつもお母さんと一緒に来ている小さいお客さんが、はじめて1人でお買い物に来てくれる時には、レジの私も実はドキドキです。ドキドキしながら合計金額を伝えたら、その初めて君に、「え〜、そんなにはらえないよ!」と言われてしまったことがあります。ちゃんとお金は持っていたのに、払うのが惜しくなっちゃったらしいのです。どう言って説得しよう!わたしの心臓は爆発しそうでした。(^^)

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はじめてのおつかい

筒井頼子 林 明子 
福音館
¥840.(税込).
初版1977.4(こどものとも1976.3)
横27cm×縦19.5cm
対象:3歳から

 大忙しのお母さんに代って、赤ちゃんの牛乳を買いに行くことになったみいちゃん。もう5歳だからと、誇らしい気持ちで出かけたのですが、通いなれたお店までの道が、お母さんと一緒の時とは何だか違って感じられます。坂の上にお店が見えたのでほっとして駆け出したみいちゃんは、ころんで、大切に握っていたお金を道に落としてしまいます・・・。足の痛いのも構わずお金を捜すみいちゃん。この後も思い掛けないいくつかの出来事があって、やっと牛乳を買うことが出来たみいちゃんは、お釣りも受け取らないでおうちに向かっていちもくさん!
 おつかいの絵本は数あれど、この本を読まないでは済まされないと言えるくらい、小さい人たちに読まれているこの作品。どこかに自分の経験と繋がる所があって、小さい読者にもそのママにも共感してもらえるのでしょう。


手ぶくろを買いに

新美南吉文 黒井 健 
偕成社

¥1470.(税込)
初版1988.3
横24cm×縦4cm
対象5歳から

 きつねの母子が暮す森は厳寒。きらめく銀世界で遊んで、「お手々がちんちんする」と訴えるかわいい坊やに、母ぎつねは手ぶくろを買ってやりたいと思います。しかし町の近くまでやって来てみると、母きつねは昔人間に追われた記憶が蘇って足がすくみ、子ぎつね1人で買いに行かせねばなりませんでした。子ぎつねのぼうやは教えられたとおりに、帽子屋を見つけて手ぶくろを求めますが、「このお手々にちょうどいい手袋下さい。」と差し出した手が、おまじないの掛かっていないきつねの手の方だったというくだりはあまりに有名です。
 子どもの頃には子ぎつねが手ぶくろを買う場面にドキドキした記憶がありますが、大人の今は、心配しながら待つ母ぎつねの心情に思いが行きます。「子ども用」としてだけで括れない児童文学の深さですね。


 



ねこのおすしやさん

鈴木まもる文.絵 
偕成社
¥1,050.(税込).
初版2009.9
横21cm×縦25.5cm
対象:4歳から

 ある日、江戸前ねこずしと看板が書かれた車が、山奥の村にやって来ました。新鮮なネタでにぎったお寿司に憧れていた村の猫たちは大興奮!すし屋のお兄さんに勧められ、どんどん注文し、お腹いっぱい食べたねこたち。そこで、はっと気が付きました。ぼくたち、お金を持っていなかったんだ。・・・・・ おすし屋さんは、ぼくが釣った魚だからたださ!と言ってくれますが、ねこたちはお代を払う代わりに、魚を獲るお手伝いをしたいと思います。
 物を買ったらお金を払うという、経済社会の原則を、いとも簡単に飛び越えてしまうおすし屋さん(作家の鈴木さん!)に、経済社会の片隅に生きる本屋の私は憧れます。「この本大好き」と言ってくれるお客さんに、「じゃあ持って帰っていいよ!」と一度は言ってみたいのです。



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