“サンタクロースの部屋 ”の号 2014.12

 クリスマスが近づくと、プレゼントの準備で街は賑わいます。一方で、「クリスマスを、サンタさんからプレゼントをもらうだけの日にしてしまっていいの?」という考え方もあります。世界中の大人たちが、サンタさんの代理を秘密裏に遂行したがる、その理由はいったい何なのか?その答えが今回ご紹介する3冊の中にあるかもしれません。

 

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サンタクロースって

ほんとにいるの?

暉峻淑子 
杉浦範茂
 
福音館
本体 \900
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初版 1981.12(こどものとも)
横23.5cm×縦25.5cm
対象:4歳から

 

 

 

 どの子もみんな一度は聞いてきます。「サンタさんって、本当にいるの?」 それはおそらく科学的な探究心からではなく、自分の大切に思っていることに疑問や不安を抱き、信頼する大人に間違いないよと保証してもらいたい気持ちからだではないでしょうか。そんな時に思い出して欲しいのがこれ。お決まりの質問をする子どもたちと、それに機知とユーモアと誠意で答える両親のひと晩の会話で、この絵本は構成されています。サンタクロースは子どもたちを喜ばせるのが何より好きだという作者の思いと、両親の答えに説得力を持たせる挿絵のコンビネーション。名作です!
 少女の手紙に新聞記者が答えた「サンタクロースっているんでしょうか?」はあまりに有名ですが、日本の幼児〜低学年のこどもたち(と、そのご両親)には、まずこれをお薦めしたいです。



 

ファーザー・クリスマス

サンタ・クロースからの手紙


J.R.R.ト−ルキン ・.絵
ベイリー・トールキン 編.
瀬田貞二・.田中明子 訳.
評論社
本体 \2,800.
初版 2006..10.20
横25cm×縦20cm
対象:子どものいるご家庭

 

 

 

 オクスフォード大学教授で、「指輪物語」の作者として知られる作者が、わが子のために書いた「サンタクロースからの手紙」集。4人の子どもたちが成人するまでの15年間、毎年欠かさず書かれたこの手紙には、トールキン自身による挿絵も添えられ、そこにはトールキンのイメージ豊かな「サンタワールド」が築かれている。中つ国を構築したトールキンの、また別の空想世界であるこの書簡集は、サンタクロースってだれだろうと考え始めた子どもたちと一緒に読んで、「わが家のサンタさん」のイメージを強固にして頂きたいものです。



サンタクロースの部屋

松岡享子  
こぐま社
本体 \1,500.
初版 1978.11.20
横12cm×縦18cm
対象:子どもに関わるすべての大人

 

 

 

 児童文学の普及に多大な影響を与えた松岡享子さん。そのエッセイ集であるこの本のはじめに、アメリカの児童文学評論誌で読んだという一文が紹介されています。そのテーマは「サンタクロースその人」が子どもの心から出て行った後、心のその場所に何が残るかということです。「サンタクロース」の存在を幼い日に信じることは、心の中に「信じる」という空間を作り上げ、その人を見えないものを信じる能力のある人に育てることになるのだと、松岡さんは書いています。 
 そしてまた、子どもは本来「ふしぎ」を信じたがっている人たちである、とも続けています。空想世界を読み、空想世界を誰かと共有することで養う、人としての「豊かさ」について、わたしも毎年この時期になると忙しさの中で思い返します。


 

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