“おかあさん!スイッチ ”の号 2015.4

 子どもの本では、両親のうち「おかあさん」の登場する割合が圧倒的に多いです。母の日だからお母さん特集・・・って、わざわざすることも無いくらいに。世の中にはお父さんっ子も多いはずなのに、どうしてなんでしょうね。今月はあえて、そのお母さん特集。でもね、ちょっと変わった角度からのセレクトですよ。お母さん!という言葉で主人公の心にスイッチが入って、主人公は違う自分を体験するのです。

 

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かいじゅうたちのいるところ

モ−リス・センダック 文・絵
神宮輝夫 
冨山房
本体 \1,400.
初版 1975.12.5
横25.5cm×縦23.5cm
対象:3
歳から

 

 

 

 うんと悪いことをして叱られる時、日本だったら“そんな子はうちの子じゃない!”って外に出されますよね。でも欧米では、お仕置きは“晩ご飯抜きで、お部屋にいなさい”ってことになるらしい。とにかく、マックスは狼のぬいぐるみをかぶって大ふざけをして、寝室に放り込まれてしまいます。すると、にょきにょき木が生えて、寝室はワイルドな世界に。・・・というこのお話、現代絵本の巨匠であるセンダックの代表作で、みなさんよくご存知でしょう。おっそろしいかいじゅたちと出会って、かいじゅう踊りを踊って、かいじゅうたちの王様にまでなったマックス。だが、かいじゅうたちを眠らせた後、急にさみしい気持ちになった。優しい誰かさんのことを思い出したのだ。かいじゅうたちは荒々しく止めたけど、マックスはその誰かさんに逢いたくて、帰りの船に乗ってしまう。そうだよね。そういうもんだよ、男の子は特に。



まゆと うりんこ

 

富安陽子 
降矢奈々 
福音館
本体 \800.
初版 こどものとも 2007.2.1
    傑作集 2013.4.10
横19.5cm×縦26.5cm
対象:4歳から

 

 

 

 山姥の娘まゆは、まだ小さいけれど独立心が強くて、それに母さん譲りの怪力です。ある日、まゆは迷子のうりんこ坊やに会いました。その頼りなげな様子に心を動かされたまゆは、うりんこのお母さんになってあげようとします。でも、食べさせたりおんぶで寝かしつけたり、「おかあちゃんって たいへんだなあ」と、さすがのまゆもお疲れ気味。ところが、ちょっとウトウトした間に、うりんこが谷底へ落ちそうに!「じっとしてるんだよ!おかあちゃんが いま いくからね!」 まゆのお母さんパワー全開です。うりんこを無事本当のお母さんに返して、まゆは山姥かあさんのところに帰ることが出来るかな?



よるくま

酒井駒子 文・
偕成社
本体 \1,000.
初版 1999.10
横24cm×縦19cm
対象:5歳から

 

 

 

 眠りにつく間際、男の子がベットでママにお話します。― すごくかわいいこがきたんだよ。くまのこ。よるくま というなまえ。―  目が覚めたらお母さんがいなかったとよるくまが言うので、一緒に探してあげたのだと男の子は言います。真っ暗な夜の街を歩いて、よるくまに泣かれて、そしてとうとう、よるくまのお母さんがふたりを釣り上げてくれて・・・と、男の子のお話は続きます。
 「おかあさんは?おかあさんは?」と泣くよるくまも、その気持ちを思いやる、お兄ちゃん気分の男の子も、どちらも小さな読者たちの気持ちそのままなのでしょう。そして、男の子の話に耳を傾ける優しいママと、頼もしく暖かなくまのお母さんと、そのどちらも自分のお母さんのようだと、子どもたちは感じているはず。酒井さんの作品はたくさんありますが、このデビュー作が今でもわたしの一番のお気に入りです。


 

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