“新しく描かれた昔話絵本”の号 2016.2

 昔話絵本の中でも、特に高い評価を得て長く読み継がれてきている作品は、子どもの本屋であるわたしたちにとって、後世に読み継がれるよう守っていきたい大事な大事な宝物です。でも、そのロングセラーに対抗出来るだけの魅力を備えた新作が出た場合は・・・。迷います!そして、最終的には、小さな読者たちに読んでもらって判断を委ねようと思うのです。さて、今回の3作品、みなさんならどちらを選びますか?

 

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3びきのくま


 

スズキコ−ジ 
鈴木出版
本体 ¥1,300.
初版 2015.11
横5.21.5cm×縦26.5cm
対象:3歳から

 

 

 

 お店の定番として売り続けている3びきのくまは福音館版で、ロシアの文豪トルストイ作、絵はユ−リ−・ワスネツォフです。このお話を子どもたちと読むと、なぜかすごくドキドキします。よそのお家に勝手に入って食べたり飲んだりすることに、ある種の罪悪感を覚えてしまうのです。自分の中の小さい子どもが、そんなことしちゃいけないんだよ!と心配しているような。ところが、このスズキコージの3びきのくまだと、なんだかとっても気楽に読めてしまうのです。道に迷ったんだし、お腹もすいているんだし、女の子がこんなことするのも仕方ががないんじゃないの・・・と。わたしのなかの道徳心はどこに行ってしまうのでしょうね。スズキコージ恐るべし。お客様にどちらをお奨めしようか迷います。

 

 

いっすんぼうし

 

広松由希子 
長谷川義史 

岩崎書店
本体 \1,400.
初版 2013.3
横21.5cm×縦28.5cm
対象:4歳から

 

 

 

 今まで棚に入れていたいっすんぼうしは、これまた福音館版。石井桃子の文章は文学の香りたかく、表現は細やか、秋野不矩の絵も格調高く、平安と思える時代背景にうっとりさせられます。福音館版になにひとつ不満があるわけではありません。が、長谷川義史の一寸法師は、そのやんちゃで負けん気そうな表情がよく知っている誰かみたいに思えるのです。広松由希子のテキストは大変シンプルで、一寸法師がオニのお腹の中、笑う筋、くしゃみの筋、泣く筋を引っ張るくだりが、ぐっと読者を惹きつけます。忠義や孝行を取るか、やんちゃと笑いを取るか・・・。これまた、迷います。

 

 

赤ずきん

 

ヤ−コプ&ヴィルヘルム・グリム 
フェリクス・ホフマン 

大塚勇三   
福音館
本体 \1,400.
初版 2012.6
横21cm×縦23.5cm
対象:4歳から

 

 

 

 赤ずきんといえば、岩波版と思っていました。再話はもちろんグリム兄弟ですが、どの絵本より岩波版のワッツの挿絵に馴染んでいたのです。ホフマンの赤ずきん出て来た時には、ほんとうに驚きました。そして、赤ずきんが何故オオカミに騙されたのかが、わかった気がしたものです。ホフマンの赤ずきんは、ワッツの赤ずきんよりも、幼くてあどけなく見えるのです。おばあさんに化けたオオカミとのやり取りも、それで納得がいきました。ホフマンの赤ずきんは、お孫さんのために作った私家版がご本人が亡くなった後に発見されたそうです。ホフマンは1911年生まれですが、孫娘が出来てからこれを描き、ワッツは1942年の生まれですが、赤ずきんは早い時期に手がけた言わば出世作。ホフマンはワッツの作品を知っていたのでしょうか・・・?、個人的な好みを問われれば、赤ずきんについてはホフマンを上げたいのですが、店頭には両作品とも置いています。見比べてご意見お聞かせください。


 

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