“3.11から5年、再生を描く絵本”の号 2016.3

 3.11の後、その被害の大きさに心を痛め、復興への願いを込めた絵本がたくさん出版されました。そういった作品を手にする時、でも、大人の感性をそのまま絵本にしても、メッセージは子どもに届かないよ・・・という思いにとらわれる事もありました。今月ご紹介する絵本を選んでみて、読んだ子どもたちが元気に前を向けるような、生きているっていいね!と感じられるような作品こそが「絵本」なんだと、改めて思ったのでした。

 

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はしれディ−ゼルきかんしゃ

  デ−デ


 

すとうあさえ 
鈴木まもる 
童心社
本体 ¥1,400.
初版 2013.11
横5.26.5cm×縦19cm
対象:5歳から

 

 

 

 東北を中心に大きな地震が起きて、道路は壊れ、電気も使えなくなってしまいました。生活や復興に必要な燃料を運ぶ手立てがありません。そこで、地方の線路で細々と働いていたディーゼル機関車が、全国から新潟に集められ、念入りな整備を受けました.。軽油で動くディーゼル機関車に、電気の止まった線路を東北まで走らせようというのです。デーデもその中の1台でした。一番列車はデーデと仲間のゴクが、10輌のタンクを引っ張って出発です。デーデには走り慣れた磐越西線ですが、辺りはすっかり様子が変わってしまっています。大変なことが起きたんだ・・・。上り坂で雪に車輪が滑って立ち往生したデーデとゴクを、会津若松のディーゼル機関車イトが押してくれて、デーデたちはようやく峠を越えることができました。走れ、機関車!そしてとうとう、前方に磐梯山の大きな山陰が見えてきました。
 これは、実際にあったことを元にしたお話です。デーデたちが最初に燃料を届けたのは震災から2週間目のことだったそうです。その影には、ディーゼル機関車を走らせるために懸命に働いた、大勢の人たちの力があったのですね。

 

 

のっぽのスイブル155

 


小森 誠  
文・
偕成社
本体 \1,400.
初版 2016.01
横19cm×縦26.5cm
対象:4歳から

 

 

 

 古い、風変わりな形の作業車が、ガレージに眠っていた。すっかり錆び付いて、もう一度動けるかどうか誰も知らない。そんなある日、ガレージは大きな地震の揺れに揺すぶられた。そして作業車スイブル155は、その後工場に運ばれて、バラバラに分解され、壊れた部品は新しく付け替えられて、また働けるように組み立て直された。再びトラックに乗せられたスイブルが下ろされたのは川岸。そこで川の中に飛び込んで、スイブルは自分のことをはっきりと思い出した。ぼくは、水の中でも作業のできる水陸両用ブルドーザーだったんだ!激しい地震で崩れかかった橋桁を補修するために、スイブル155は、張り切って働く!

 

 

あさになったので 

  まどをあけますよ

 


荒井良二  
文・
偕成社
本体 \1,300.
初版 2011.12
横29.5cm×縦26.5cm
対象:子どもから大人まで

 

 

 

 朝になったので、窓を開けますよ。山の朝、海辺の朝、街の朝。そこには、深呼吸したくなるような新しい1日の始まりがあります。あなたの住んでいるところは、どんな朝ですか?あなたの大好きなそこは、どんな朝ですか?と、絵本全体が呼び掛けて来ます。震災には触れていませんが、東北での支援活動を重ねた作者の心に、何かが灯ったのだろう、と感じられる作品です。元気出していこうよ!のメッセージとしても、新しい暮らしに向かう人に贈る1冊としてもぴったりです。


 

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