“時間を止める絵本”の号 2017.8

 絵本は30ページ、見開きで15場面前後が平均的なところ。わずか15場面のなかに物語世界がある訳です。ページをめくるに従いお話の時間は流れますが、限られた場面数を生かすため、実はそれぞれの場面の中でも時間が流れているということが、絵本ではたくさん見られます。しろくまちゃんのほっとけーきの、ホットケーキを焼く場面などがまさにそうですね。
 そういった絵本の中で、時間や動きや音を止めて一瞬を見せようと試みる作品もあり、そんな作風の絵本に出会うとこれもまた新鮮です。自分の中でしん・・・と何かが止まる感じ、時間を止める絵本を味わってみてください。

 

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  くさはら どん

 

 

松岡達英 文・
福音館
本体 ¥800.
初版 2014/4 
横23cm×縦21cm
対象:2歳から

 

 

 

 草むらで、林で、川原で。足音に驚いて飛び立つ虫たち。その静止した状態とパッと飛び立つ瞬間が、交互に描かれています。見慣れた“留まっている”虫と、じっくり見ることの難しい“飛び立った瞬間”の虫を、心行くまで比較することができる、小さい人達の気持ちに応えた科学絵本です。そうそう、一瞬“威嚇の姿勢”を取る虫や、羽は持っていても潜り込んで逃げる虫もいますよ。

 

 

よるのおと

 

たむらしげる 文・絵
偕成社
本体 ¥1,400.
初版 2017/06
横22cm×縦29.5cm
対象:5歳から

 

 

 

 夜も遅くなって、森の中にあるおじいちゃんの家を訪ねた男の子。闇の中に響く遠い汽笛。虫の音。池に水を飲みにやって来た鹿の親子の気配。池の中ではカエルが鳴き、鯉が泳ぎ、その水面をフクロウがじっと見つめています。それぞれの生き物たちの一瞬が捉えられた各ページ。人の介入しない、自然の中の闇です。やがて飼い犬が少年を見付けて駆け出し、おじいちゃんが迎えに出て、久しぶりの家族の時間が動き始めます。

 

 

みずたまレンズ

 

今森光彦 文・写真
福音館
本体 \900.
初版 2008/3
横23cm×縦25.5cm
対象:3歳から

 

 

 

 雨の後には、草むらにもクモの巣にも、小さな昆虫たちの体にまでも、降った雨が“みずたま”となって付いています。わたしたち人間は気づかないほどの小さなみずたまも、虫からすれば大きなみずたま。自然のいたるところについたそのみずたまには、おや、周りの景色が逆さまに写っていますよ。自然の不思議や美しさを鮮明に見せてくれる、カメラの術です。


 

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