|
“時間を止める絵本”の号 2017.8
絵本は30ページ、見開きで15場面前後が平均的なところ。わずか15場面のなかに物語世界がある訳です。ページをめくるに従いお話の時間は流れますが、限られた場面数を生かすため、実はそれぞれの場面の中でも時間が流れているということが、絵本ではたくさん見られます。しろくまちゃんのほっとけーきの、ホットケーキを焼く場面などがまさにそうですね。 |
くさはら どん |
松岡達英 文・絵 |
|
|
|
|
草むらで、林で、川原で。足音に驚いて飛び立つ虫たち。その静止した状態とパッと飛び立つ瞬間が、交互に描かれています。見慣れた“留まっている”虫と、じっくり見ることの難しい“飛び立った瞬間”の虫を、心行くまで比較することができる、小さい人達の気持ちに応えた科学絵本です。そうそう、一瞬“威嚇の姿勢”を取る虫や、羽は持っていても潜り込んで逃げる虫もいますよ。 |
よるのおと |
たむらしげる 文・絵 |
|
|
|
|
夜も遅くなって、森の中にあるおじいちゃんの家を訪ねた男の子。闇の中に響く遠い汽笛。虫の音。池に水を飲みにやって来た鹿の親子の気配。池の中ではカエルが鳴き、鯉が泳ぎ、その水面をフクロウがじっと見つめています。それぞれの生き物たちの一瞬が捉えられた各ページ。人の介入しない、自然の中の闇です。やがて飼い犬が少年を見付けて駆け出し、おじいちゃんが迎えに出て、久しぶりの家族の時間が動き始めます。 |
みずたまレンズ |
今森光彦 文・写真 |
|
|
|
|
雨の後には、草むらにもクモの巣にも、小さな昆虫たちの体にまでも、降った雨が“みずたま”となって付いています。わたしたち人間は気づかないほどの小さなみずたまも、虫からすれば大きなみずたま。自然のいたるところについたそのみずたまには、おや、周りの景色が逆さまに写っていますよ。自然の不思議や美しさを鮮明に見せてくれる、カメラの術です。 |