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“世界の民話”の号 2018.10
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巨人の花よめ スウェーデン・サーメのむかしばなし |
菱木晃子再話 平澤朋子絵 |
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極寒のラップランドでトナカイを追って暮らす父と娘。その娘チャルミが賢く美しいという噂に、結婚の申し込みが相次ぎますが、チャルミ自身は今の生活に満ち足りていて、どんな立派な贈り物をもらってもお嫁に行く気はありませんでした。ところが、山の奥に住む乱暴者の巨人がチャルミに目を付け、嫁によこせと言ってきます。父親は弱り果てますが、賢いチャミルはそう簡単には巨人の思い通りにさせません。読んでいいると、そうそう、日本にもこういうお話があった!と思い出しますね。鬼の嫁さんとか、山男の手袋とか・・・。弱くても知恵を使って生き延びて来た人々の物語は、洋の東西を問いません。 |
王さまになった羊飼い チベットの昔話 |
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羊飼いの男の子は、食うや食わずの貧しい毎日を送っていました。ある時、地主に貰ったわずかな昼食を食べようとしていると、うさぎが一羽やって来ます。男の子は、全部食べたってどうせお腹いっぱいにはならないからと、うさぎに昼食のツァンパを分けてやります。そんなことが続いたある日、うさぎは突然白いヒゲのおじいさんになりました。このうさぎは、悪魔と戦って負けた神様の仮の姿だったのです。男の子は、呪いを解いたお礼の宝を断り、動物の言葉のわかる力をもらいました。そして、そこから彼の運命は変わり始めます。これはチベットの昔話ですが、中国にも日本にも、動物の話のわかる力を授かったお話はありますね。欲張らず、動物たちの言葉に耳を傾け、大切な場面でよく考えて機転を働かせて、男の子は幸せを手に入れます。国も時代も超えて私たちを勇気付けてくれるお話です。 |
ひまなこなべ アイヌのむかしばなし |
萱野茂文 どいかや絵 |
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アイヌのクマ送りの儀式が、わたしはどうにも腑に落ちませんでした。赤ちゃんの時から大切に育てたクマを、その儀式で殺すというのがわからなのでした。ところが、この物語を読んでようやく、アイヌ民族の世界観が少しだけわかった気がしています。このお話のなかで、クマの神は天から降り、立派な猟師に射られてその家に迎えられ、祈られ、集まった村人との宴を楽しみ、たくさんのお土産を背負って天の国に帰るのです。ところで、その家には踊りの大変上手な謎めいた若者がいて、クマの神はその若者に会いたさに、何度も天から降りて、この家の猟師の矢にに射られるのでした。そうそう、“ひまなこなべ”とは、暇な小鍋という意味なんですよ。猟師の家の台所の小鍋が、このお話の鍵を握っているのです。 |