|
“ウソをつく”の号 2019・10
|
きつねのホイティ |
シビル・ウェッタシンハ文・絵 松岡享子訳 |
|
|
|
|
元気で仲良しのおかみさんたちが暮らす、スリランカのちいさな村。その村はずれに、きつねのホイティが住んでいました。いつもお腹をすかせているこのきつねは、おかみさんたちの作る晩ご飯がうらやましくてなりません。そこである日、干してあった洗濯物を身にまとって旅の人を装い、アンゴウさんの家に行って晩ご飯をご馳走になりました。まんまとおかみさんを騙したつもりのホイティは、次にはマンゴウさんの家に、そして別の晩にはランゴウさんの家にも。でもね、ホイティは上手くやったつもりだったけど、おかみさんたちにしっぽを見られていたのですよ。そんなホイティを面白がるおかみさんたちですが、ホイティが調子に乗って彼女たちを馬鹿呼ばわりしたのを聞いて、仕返しをすることに。 |
山おとこのてぶくろ |
松谷みよ子文 田島征三絵 |
|
|
|
|
昔むかしは山の村。そこに三人の娘と老夫婦が暮らしていた。山には無慈悲な山男がいて、父さんが仕事で疲れてあくびをするたび、娘を一人連れて行ってしまった。そして娘に留守番をさせる時には、部屋をのぞくな、帰るまでにこれを飲んでおけと大きな手袋を置いていったって。覗くなと言われたら覗きたいし、そんな大きな手袋は飲み込めない。帰ってきた山男に「部屋は覗いていない、手袋は飲んだ」と嘘をついて、娘たちは殺されてしまった。さて最後に残った末娘のお花も山男に連れて行かれたが、開けるなと言われた部屋で山男に刺された若者を見つけて手当をし、知恵を借りる・・・という、3回目で助かる昔話お決まりの展開ですが、印象的なのは、山男が「おら、うそ つかね よめこ ほしかった」と泣く場面です。山男のすることに同情の余地が無いとは言え、その言葉にはホロリとさせるものがあります。 |
泣いた赤おに |
浜田廣介文 梶山俊夫絵 |
|
|
|
|
心優しい赤鬼は人間と友だちになりたいと思っていますが、村人たちは恐れて近づきません。そこで、友だちの青鬼がひと芝居打ってくれることになりました。村で暴れる青鬼を赤鬼がやっつけて、村人たちの信用を得ようというのです。この芝居は上手くいき、村人たちは赤鬼を訪ねて来るようになります。そんな毎日に幸せを感じる赤鬼ですが、気掛かりはあれから姿を現さない青鬼。実は青鬼は、赤鬼の傍にいて村人の不信を買わないよう、旅に出てしまったのでした。ウソの芝居を守り通したい青鬼の思い。お話はここで終わっていますが、赤鬼は青鬼を失ってまで村人たちと付き合いたかったのだろうかと、いつわたしはも思います。ご存知、浜田廣介の名作です。 |