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“ヒトとクマ”の号 2008.6
人とクマの関係は、人と自然の縮図。私たちのクマへの思いには、大きな恐れの陰に、あこがれと親しみとが、わずかに混在するようです。そして、絵本作家たちを動かす何かがあるのか、クマは絵本で取り上げられることの多いテーマです。今日取り上げた3冊は、大人の方にもぜひ読んでいただきたい作品です。雨の日にでも、ゆっくりとどうぞ。 |
クマよ |
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星野道夫写真・文 |
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クマについてはこの写真家をおいて語ることは出来ません。アラスカをはじめとする自然を撮り続けた彼・星野道夫の、特に美しく威厳に満ちたクマの映像は印象的です。また、詩のような文体で、自然や時の流れや命のつながりについて書いてきた写真家でしたが、まるで彼の書いたナヌークの物語のように、ヒグマの事故で逝ってしまいました。クマの生きる自然が、途絶えることなくいつまでもあるようにと、この写真集を見て改めて思います。 |
わたしのくまさんに |
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ハシュレイ作 ラマルシュ絵 今江祥智訳 BL ¥1,365(税込). 初版2004.9 横28.5cm×縦235cm 5歳から 大人まで |
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クマはまだ若かったころに、不思議なものを見付けて拾います。それは、小さなしるしの書き連らねられた紙切れ。そして何年か過ぎた夏、丸太小屋に滞在する女の人が本を読むのを見かけ、女の人を夢中にさせているのも、やっぱりその小さな印に埋め尽くされたものであることにクマは気付きます。やがて、クマと女の人の距離は縮まり、ふたりは一緒に本を読むようになります。「むかし あるところに、」と読んで聞かせる女の人のことばは、クマにはなにひとつわからないのに、その響きがクマの心を揺するのでした。そして、秋がきて・・・。 |
なめとこ山の熊 |
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宮沢賢治文 あべ弘士絵 |
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改めてご紹介するまでも無い、賢治の代表作のひとつ。あべ弘士さんの絵が圧巻のこの絵本は、熊撃ち猟師と熊たちの、闘い時に思い合う様を描いて、ファンタジーでありながら、読み手を否応無く、自然の厳しさ神聖さへと連れて行きます。まるで自分が当事者となったようで身がすくみます。それでいながら、読後には、これはやはりハッピーエンドだと思えるのが不思議です。自然から遠い暮らしをする現代の私たちに、自然から目を逸らしてはいけないよと、賢治が送ってくれるメッセージです。 |