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“むかーしむかし”の号 2010.5
昔話のシリーズが、各出版社から相次いで出ました。昔話はピコットでは人気のジャンルですが、新刊が少なくて残念に思っていたところでした。だれもが知っているお話を選んでご紹介します。読み慣れたロングセラーと読み比べてみるのも楽しみですね。 |
ももたろう |
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広松由希子文 伊藤秀男絵 岩崎書店 ¥1,365.(税込) 初版2009.12 横21.5cm×縦29cm 対象4歳から |
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ももたろうといえば孝行息子の代名詞。しかし、もう1つのももたろうのお話では、彼は喰っちゃ寝食っちゃ寝のぐうたら息子として語られます。欲しいだけ食べたり寝られるだけ寝たい・・・という庶民の願いが込められているのだそうです。この絵本に取り上げられているのは、ぐうたらの方。伊藤さんの絵からは、そんなももたろうを可愛がるって育てる、おじいさんおばあさんのおおらかさも感じられます。やがてその怪力ぶりが殿様の目にとまり、ももたろうは鬼退治を命じられます。きび団子を作ってもらって出かける辺りから、そのももたろうもきりりとした表情に!鬼退治を果たし、子どもや宝を取り返して無事戻るところは定番通りです。お伴の動物たちときび団子を巡って、「ひとつはやれない、はんぶんやる」とやりとりする場面が、わたしのお気に入り。(^^) ※ いまむかしえほんシリーズ |
さるかに |
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山下明生文 高畠 那生絵 |
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かにが柿の木を育てるのに、この絵本では栗と臼と牛の糞が手を貸します。さるの投げつけた青い柿の実にかにがつぶされ、生まれた子がに達がお母さんのあだ討ちをするところで、なぜ栗と臼と牛の糞が助太刀するのかが納得できる展開です。結末で、さるが殺されてしまうか許されるかのあたりは、巻末の解説で作者が触れていますのでお読みください。また、お母さんがにがつぶされる場面やさるがやっつけられる所については、手加減無く描かれいながら、昔話としてののどかさやユーモアも楽しめる仕上がりです。 ※ 日本の昔話シリーズ |
ぶんぶくちゃがま |
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富安陽子文 植垣歩子絵 |
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お寺に忍び込んだいたずらたぬきが、うっかり茶釜に化けたばかりに囲炉裏に掛けられ、熱さのあまりに元の姿のに戻れなくなる・・・というこの昔話は、富安版では、古道具屋とたぬきの暖かい関係が丁寧に描かれています。ぶんぶく茶釜の見世物小屋をしながら仲よく暮す二人の様子は、ちょうど「くまのアーネストとねずみのセレスティーヌ」や「たこやきやのおじさんとたこやきたち(たこやくようちえん/さいとうしのぶ)ポプラ社)」の間に流れるのとおなじ幸福感が感じられます。ちょっとしたいたずらから運命が変わってしまったたぬきが、古道具屋さんと楽しい毎日を送れてあ〜よかった!と思うのは、わたしだけでしょうか? ※日本名作おはなし絵本シリーズ |