命について考える絵本”の号 2019.6

 

 

 今“生”のさ中にあるわたしたちですが、生きるということや、やがて迎える死について理解できているか?といえば、わからないと答える人の方が多いのではないでしょうか。かく言うわたしもその一人です。そんな、大人でさえ自信のないテーマを、小さい人たちに伝えるのは本当に難しい。だけど、知らない振りはできませんよね・・・。必要とされた時のためにと店頭に置いている絵本をご紹介してみます。

※ "死についての絵本"特集 2007.5 
   http://pikot.com/ehon/2007/5.htm

※ 親しい人を亡くしたお子さんのための本
   https://ameblo.jp/pikot/entry-12278228681.html


 

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おおかみのこが はしってきて

 

寮美智子 文 小林敏也 絵
ロクリン社
本体 ¥1,700.
初版  2019/01  パロル舎版1999/03
横19cm×縦26.3cm
対象:5歳から

 

 

 

  オオカミの子が氷の上で転んだんだ。どうしてころんだの?氷が偉かったからだよ。でもその氷が溶かされるのは、太陽のほうが偉いからね。そんなふうにアイヌの父と子の会話は続きます。そして、山の木を切り倒す、木よりちょっとだけ偉い人間のことになった時、息子は、「でも、にんげんは しんじゃうね・・・」と尋ねます。その息子に、父はこう答えるのです。そうだね、死んで土に帰るね。それはね、土が一番偉いからだよ。(略)だから、土からいろんな命が生まれる。草や木が生まれ、木の実が実り動物を養う。(略)わたしたちみんな、土から生えてきたんだよ。みんな、土から生えた兄弟なんだ。
 このお話は、アイヌに伝わる早口言葉から寮さんが書き起こしたそうです。わたしたち自身も自然の一部であると実感できることは、命を知るヒントになるかもしれません。

 

 

100万回生きたねこ

 

佐野洋子 文・
講談社
本体 ¥1,400.
初版1977/10

横26.4cm×縦24.4cm
対象:5歳〜

 

 

 

 立派なトラ猫がいました。彼は100万回死んで100万回も生き返りました。王様の猫だったことも、船乗りの猫だったこともサーカスの猫だったこともあったのですが、トラ猫はそんな自分に満足できなかったからです。ある時トラ猫はだれのものでもないノラ猫として生き返り、美しい白い猫と夫婦になりました。子どもたちも育ち、白い猫がおばあさんになって死んだ時、トラ猫は泣きました。泣いて泣いて、そして死んで、もう生き返ることはありませんでした。
 このお話をわたしは、人生を重ねた大人のためのお話に分類していました。ところがある時、あるお母さんが息子さんの様子を話してくださいました。五歳の息子さんは、トラ猫が最後に本当に死んだところでだけ涙するのだそうです。それまでの死では泣かないのに。自分の生き様に満足して逝ったトラ猫の、満たされた気持ちに感動するのでしょうねと、お母さんと驚き語りあったことでした。絵本は年齢や体験や理論を超えて人の心に届くことを教えてもらった出来事でした。佐野洋子さんの代表作です。

 

 

きみがしらない ひみつの三人

 

 

ヘルメ・ハイネ  
天沼春樹 

徳間出版
本体 ¥1,300.
初版2004/03
横17.5cm×縦22.5.cm
対象:6歳〜

 

 

 

 君が生まれた時に、その3人は君の所にやってきたんだ。気付いていないかもしれないけど、三人はそれからずっと、君の心と頭と体の面倒を見ているんだよ。3人は普段とても仲良しなんだけど、時には喧嘩をすることもあってね、そんな時には君は具合が悪くなってお医者さんに診てもらわなくちゃいけなくなる。それでまた3人組が君の面倒を上手く見られるようになると、君の調子はすっかり良くなる・・・って訳さ。こうして、ひみつの3人は君が生涯を終えるまで、ずっと君と一緒にいるんだよ。それから、実はその後も3人にはまだ少しだけ仕事が残っているんだけどね。
 こんなふうに、生きるメカニズムがわかりやすく説明されているお話です。亡くなった後、残された人々の中に思い出を残すという役割が書かれていることで、小さい人とも心穏やかに生とに死について語り合えそうです。

 

 

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