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ピコット便り Vol.136 春らんまんの号 2003.春 |
“本好きな子に育って欲しい”というのは、ご両親のわが子への願いのひとつだと思います。ところがそれが順調に行って、寝食も忘れて読みふけったり、お話の世界へ行ったきりの(様に見える)子に育った時、こんどは逆に、“本が好き”が子育ての悩みになる方もありますから、思うようにはいきません。 勿論わたしも本好きな子どもでしたから、「本を読むのはいいけれど、読み始めると、呼んでも返事をしないのがイヤ・・・。」と母に言われました。夢中になるあまり、お話の続きを自分で勝手に進めてしまうこともありましたし、物語の登場人物たちを私自身の生活の場に登場させて、嬉しいような後ろめたいような気分でこっそり楽しんだりもしたものです。 そんな時代もとうに過ぎ、思えばいつの間にか、どんなに気に入った物語でも、登場人物たちとは距離を持って付き合うようになっています。大人になってしまったせいなのか、それとも次々と本の味見をしなくてはならない本屋の宿命かはわかりません。それでも、主人公が悪事を働くお話は苦手ですし、用心しないと、慌ててページを閉じた怖いお話の続きを、夢で見るような事になってしまいます。
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