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ピコット便り Vol.147  しもばしら

                                            2006.冬

 最近は物怖じしない子が多くなったと感じます。子どもだけでお買い物に出掛けるのも、ネットで社会と繋がることも、物怖じせずどんどんやってのけて頼もしい限りです。中学生の海外ホームスティなど珍しくない時代ですから、これくらいの積極性はなくてはいけません。   
 
ですが一方で、「世間は怖い」という思いも無用ではないと、わたしは思います。子ども時代だけでなく、本当は大人になっても、考えてみれば生きていることそのものが、なかなかに怖いではありませんか・・・。世の中すべてが自分に良くしてくれる訳ではない。天変地異は私だけを避けて行ってくれないし、世の中には理不尽な殺人や事故もあり、ぼんやりしているとだまされることだってある。めったにないそんなことは心配しないにしても、絶対安全な人生というものはあり得ません。

大人になるということは、家庭という(きゅうくつな)安全圏から社会へ踏み出すということで、それには「期待」と「恐れ」の両方をセットで引き受けなくてはなりません。小さい人たちも、そのことをどこかで分かっています。子どもたちが「怖いお話」を好きな理由はそんな所にあるのだと思います。"とってもこわい!でも読み手と一緒にいるから安心。それに、小さな主人公でも知恵と勇気で切り抜けて行けるから大丈夫"と、いわば「世間の怖さの克服」をシミュレーションするところに、怖いお話を楽しむワクワク感があります。昔話は語り継がれるなかで、怖さを試す条件が理想的な形に整って、今の時代に届けられた、「怖さをお試しできる素材」です。お話の中で「何とか切り抜けた」体験を、子どもたちは自分の経験として蓄えながら育ちます。自分を信じて困難に立ち向かえることは、生きていく上での大切な力ですが、おひざで聞いた「すえっここぶた」や「ちいさいやぎのがらがらどん」の活躍から、その力は育ち始めるのかもしれません。

bP46の「怖いお話」で書き足りなかったのはこんなことです。子どもに幸せに生きていってほしいと願う時、「勇気」や「知恵」も一緒に育ててあげなくてはならない、ということで、ちょきん ぱちん すとん おはなしは お・し・ま・い!