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ピコット便り Vol.144  風と花びら

                                            2005.春

 「優しい心になれる絵本を・・・」というお客様のリクエストに店内を見回せば、なぜか目に付くのはスリルいっぱいの昔話ばかり。「きれいな絵のものを―」とのご要望にも、きれいと言うよりは、エネルギーに満ち溢れて画面からはみ出さんばかりの表紙絵が、「出番かな?」とばかりにこちらを見返して来る・・・というのがピコットの店内。なんとかご期待に添う 絵本はないかと、冷や汗をかきながら本棚の間を歩き回る事になります。


この品揃え、決して店主の趣向が偏っているせいではない、と本人は思っています。小さいお客さまたちの好みや成長に合わせて選書した結果がこうなのです。子どもたちは、「大きくなりたい!」というエネルギーに満ち溢れています。画面からはみ出すほどにダイナミックな、長新太・スズキコージ・飯野和好といった作家の絵に惹かれるのもそのせいでしょう。

 それからまた、怖い場面を主人公が切り抜けていく昔話なども好きです。トロルに立ち向かう三びきのヤギに共感し、やまんばの裏をかくさばうりどんに拍手喝さいするのは、無意識のうちに、両親の許を離れ社会に踏み出す時の準備をしているからだと思います。人生には怖いこともいっぱいあるが、知恵と勇気で何とか切り抜けられる、と思えるのは素敵なことですね。
 

残酷なお話は子どもにふさわしくないと、昔話の内容を書き換えた絵本が作られていた時代もありました。議論され、今はこういった作品はなくなったようにも思えますが、我が子の絵本を選ぶ際に、判断に迷う方はやはり多いと思います。それでもピコットでは、できるだけ原作に忠実なもの、昔話であれば、語り継がれてきた内容がそのまま再話されたものを選んでいます。
 

たとえば「かちかちやま」では、福音館版(赤羽末吉画)でもミキハウス版(田島征三画)でも、たぬきは痛々しいやけどを負った上川に沈められます。その結末は、大切な家族を殺され、騙されてそれを食べさせられたおじいさんの怒りと悲しみを思うと、当然と感じられます。選ぶ時にはそれが「必然性のある恐さや残酷さ」かどうか、を目安としてみてはいかがでしょうか。