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ピコット便り Vol.142  かかしあかんべ

                                            2004.秋

 子どもたちは、そこに居るだけで大人の気持ちを柔らかくしてくれます。つまらないことへのこだわりを忘れさせ、前に進むエネルギーを送ってくれます。でも、子育てを1人でこなすお母さんは大変。ことに天白区のような街では、核家族で、世代の違うご近所さんと知り合う機会も少ないお宅がほとんどでしょう。気楽なアドバイスをしたり、子どもの相手になったりする人が周りにいなくて、「子どもと二人、煮詰まってしまう。」という声も聞きます。

 その点チンパンジーの子育ては・・・と言うと、「可愛いうちの子をチンパンジーと一緒にするなんて!」という声も聞こえそうですが、ヒトとチンパンジーのゲノムの違いは1〜2%。研究者によれば、人の古代の子育ては、現代よりもむしろチンパンジーのそれと近いとか。観察記録によると、チンパンジーのお母さんは、ひたすら赤ちゃんを可愛がるだけで、手を取って何かを教えるという事はないようです。「木の実割り」などの技術も、子どもの側が見て、真似て覚えるので、もしお母さんに技術がなくても、他の大人のそれに興味を持つ子は、習得のチャンスがあるのです。また、群れの大人たちは小さい子どもには寛容でも、ひとり立ちの頃の若者には厳しいようですから、その点でも、躾は"社会"の役目。お母さんは、生意気をしてへこまされ、しょげて帰ってくる子どもを、ひたすら慰め甘やかすのだそうです。チンパンジーの社会では、子どもの不始末を"親の責任"と責められることはないのですね。   

 私たちも、割合最近まで大家族や地域のつながりの中で子どもを育てて来ました。今子育てに欲しいのは、ご近所の大人と子どもの自然な関係かもしれません。と言う訳で、ピコットはお店にしては珍しく(?)、小さいお客さんにとてもおせっかいです。本の扱いに始まり、何かにと世話を焼き、遊び相手をしたりトイレに付き合ったり、時にはお母さんとの間の調整役も買って出ます。小さい人とただの“なかよし”になれるのは、なかなか良いものです。

 現代のお母さんには、古代のお母さんがやったと思われる「ひたすら可愛がる」だけの子育ては許されないでしょうけれど、何もかもを1人で背負わず、ご近所パワーをちょっとだけ当てにしたっていいのかもしれません。ピコットも、チンパンジーおばさんとなって、小さい人のご来店を待っています。