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ピコット便り Vol.141  麦わら帽子

                                            2004.夏

 ここしばらくの間に、狂牛病・鳥インフルエンザウィルスと、食に関する新たな不安が湧き上がっています。食品添加物や環境汚染などに加え、さらに用心しなくてはいけない問題が増えて、特に子育て中のご家庭は頭が痛いことでしょう。げれども、動物たちの側からすれば、事態はまた違って見えることでしょうね。捕まえて繁殖させて食用に・・・と言うのは仕方が無いとしても、おいおい人間たち、ぼくら本来の食べ物を食べさせてよ。本来の生活環境の中で飼ってよ。じゃないと病気に対抗出来ないよ!と言っているような気がします。


 昔ばなしに、「ききみみずきん」というお話があるのをごぞんじでしょうか?まじめな猟師や若者がよい行いをして、動物の言葉がわかる力を与えられる。そして「ききみみ」を使って幸せになるといったような筋立てで各地に伝わっています。中国の「石になった狩人」では、若者はこの力で洪水が起こることを知り、自己を犠牲にして村を救います。(福音館/残念ながら品切れ。)ちょっと思い出せないのですが、ヨーロッパにもそんなお話が有ったような気がします。恐らく、世界中のあちこちに似たようなお話が残されているでしょう。自然の中で人間が非力だった時代、生き物の言葉が聞けたらどんなに助かるだろうかという願いが、こういったお話を生んだのだと思えます。


 けれども、もし現代のわたしたちに「ききみみ」が授かったとしたらどうでしょうか?昔ばなしの若者たちは、どうぶつの知恵に助けられましたが、恐らく今私たちが耳にするのは、動物たちの苦情や悲鳴のはずです・・・。かくいうわたしもベジタリアンにはなれず、現代的畜産の恩恵を受けて暮らしているひとりなのですが。


 大人は子どもに、「人類の財産」である昔話を伝える責任があるといいますが、そこに今を生きるわたしたちの新たなお話も加えられたらすばらしいでしょう。けれども飼われているものも自然の中にいるものも、生き物がみな生き生きと幸せにしているのでなければ、現代には「ききみみずきん」のようなお話は生まれ得ないと思うと残念です。わたしたちが未来に残せるのはどんなお話でしょうか?